X線では体表面から数センチのところで最も線量が高くなる。
このことは、深いところにあるがんをX線などで治療する場合、がんに到達するまでに正常組織が放射線の影響を受けやすく、さらにがんの奥の組織までも影響を受けることを示している。
ところが、重粒子線のなかでも陽子線と炭素イオン線は弱い力で体内に入る。
体表面から十数センチで線量が高くなり、あとは一気に衰える性質をもつ。
すなわち、正常細胞への影響を極力抑えながら、がん細胞に最大の線量で照射できるよう調節できる。
しかも、病巣でピタリと攻撃を止め、その先にある正常細胞へはほとんど影響しない。
ボブ・サップのパンチのように破壊力と集中力を兼ねそなえたのが、重粒子線なのである。
そこで、手術で切除することがむずかしい深部のがんや、重要な臓器の近くにあって通常の放射線では照射がむずかしいがんを治療するのに向いている。
しかも、がん細胞のある臓器のはたらきを損なうことなく、より多くの線量をがん細胞に当てられる。
たとえば、通常の放射線では十分な効果が得にくい腺がん(頭頚部がん、前立腺がん、肺がんなどから発生)、脳腫傷や肉腫(骨、筋肉などから発生する腫傷)、悪性黒色腫などに効果が期待また、放射線に弱い組織ががんのまわりにあるような中枢神経系の近くにできた脊索腫や軟骨腫、あるいは周囲の組織をできるだけ保護したい肝臓がんにも有効性が認められているという。
ただし、これも局所治療のひとつ。
すでに転移しているがんや、その傾向の強いがんには残念ながら効果は期待できない。
さらに、臨床試験の初期には子宮がんや前立腺がんに対して高い線量を照射した結果、消化管に重い副作用が出たことがあった。
現在では照射量を安全な線量に落としたり、照射方法を改善するなどして重い副作用は減ったものの、やはり消化器や脊髄に近いところでは副作用があるのがデメリットだと、Tセンター長は話す。
放射線を照射した腫傷が当初より大きくならず(不変か縮小)、2年間再発しなければ「制御」とみなして、「局所制御率」で治療の成果をみてみよう。
たとえば、鼻腔、副鼻腔を占める悪性骨肉腫に16回照射をした結果、腫傷はほぼ消失した。
局所制御率は60〜80%になる。
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